悪性リンパ腫の抗がん剤治療。いささか私見を述べさせていただきます

悪性リンパ腫 闘病記
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医療従事者でない私は、薬に対してその良しあしを
具体的にお伝えすることは出来ません。

抗がん剤治療を実際に経験者した者として
抗がん剤治療に関する私見をお伝えをすることで
きっと誰かのお役に立てるかも知れない。
そう願うからに他なりません。

抗がん剤治療について、いささかながら私見をお伝えさせていただきます。

読者さまのお考えにそぐわないかも知れません。
こんな考えの人もいてるんだと
読み流していたただければ幸いです。

バイアスのかかった検索


抗がん剤治療に関しては、賛否両論。
ネット上には
否定的な意見も多く見受けられます。

肯定的に述べられているのは、病院やお医者さんの方々。
それ以外の方の肯定的な意見に触れる機会は
ほとんど無かったように感じます。

その原因の推察。
あくまでも私の場合に準えて。

「悪性リンパ腫かもしれない」そう伝えられてから
PET検査を受け、その結果を受けるまでのグレー期間。

検索した内容は
ネガティブな内容ばかりと言っても過言ではありませんでした。

例えば、『悪性リンパ腫 死亡』『悪性リンパ腫 治療』『抗がん剤 副作用 脱毛』
等など。

『悪性リンパ腫になって良かったこと』など
明るい未来を探るポジティブな検索など、行う気にはなりません。

この心境は
悪い内容・最悪の状況を予測した自分の知見との答え合わせ。
悪い内容に触れ、やっぱりなと納得。
もしくは
想像より酷い事実を知り、余計にショックを受ける。

結論は、「やっぱりな…」

過酷な現実を望んではいる訳ではないのです。
でも、過酷な将来ばかりを想像し、
裏付けの検索を行ってしまうんです。

心のどこかには「そんなに悪くは無いんだ。知らなかった。良かった。」
そう思いたい、淡い期待はあるんです。

50歳半ばだというのに、私の常識は古いのでしょうか・・・。
私が思う『がん』という病気。

本人に悟られない様に、事実と違う病名を本人に告げておいて
家族に本当の病名を告げる。

少なくとも、30年前ぐらい前まではそんな感じでした。

私は今でも
罹患者に対する心理的配慮として、なされているものだと思っていました。

現実は、グレーゾーンであるにも関わらず
「悪性リンパ腫が濃厚ですね」
私は、当時、悪性リンパ腫=ガンであるという
確信的認識は持っていませんでした。
悪性と聞くと、雰囲気で、良くないとは感じます。

でも。あっけらかんと先生がおっしゃられるので
なお更、重篤な病気ともは思いませんでした。

しかし、結果を受けるまでのグレー期間から始まるんです。
ネガティブな検索が。

悪性リンパ腫?どんな病気なんだろう?
えっ、がん…

ネガティブな思考のループ、妄想的思考が活性します。

良くない事実を一つ知るに付け
悪い事ばかりが頭にこびり付き、離れることがありません。

そんなネガティブな思考回路で検索した答えには
むしろ、明るい回答や希望は求めていないのかも知れません。

がん治療において抗がん剤治療を拒まれる罹患者の心理の推察


がんと言えば、命に関わる大問題。

抗がん剤治療を頑なに拒まれる罹患者さんのブログを目にすることがあります。

ご本人さんや周りの方達の助言で判断されたことなのでしょう。
でも、大きな疑問が残るんです。

ご本人さんや周りの方は
多くのお医者さんや専門医さんに勝る
医学的情報や知見をお持ちなのかな?

がん罹患者が
標準治療としての抗がん剤治療を受けずに亡くなるリスク

標準治療としての抗がん剤治療を受けた事に起因して亡くなるリスク

こんな命に関わることを、お医者さんでもない人に判断できるのだろうか?

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。

一方、推奨される治療という意味ではなく、一般的に広く行われている治療という意味で「標準治療」という言葉が使われることもあるので、どちらの意味で使われているか注意する必要があります。なお、医療において、「最先端の治療」が最も優れているとは限りません。最先端の治療は、開発中の試験的な治療として、その効果や副作用などを調べる臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな「標準治療」となります。

国立がん研究センター がん情報サービス 用語集より

むしろ、抗がん剤治療を拒まれる方は
病気を勉強して、生きる事への意識や執着が高い方に思えるのです。

そんな方が治療を拒まれる理由は何なんだろう?

がんの治療に関しては、ネット上に様々な噂?がはびこっています。

  • WHO(世界保健機関)は抗がん剤の使用を禁止している。
  • 抗がん剤は米国では使われていない。
  • 抗がん剤治療を受けてはいけない。

書籍でも目にしたりしますよね。

私の経験です。
心が弱っている時、こんな文言は心に沁みやすく
一たび心に入り込むと存在感が増して来るんです。

根拠もなく、おぼろげに知る抗がん剤の怖さに関する拙い知見と
ピッタリとマッチングしてしまうんです。

で、返す刀で「ですからこの治療法が良いんですよ。」

私は、これらの文言に救いを求めようという気にはなりませんでした。
むしろ、この結論を落としどころに誘導するために
危機感を煽った文章に思えてなりませんでした。

私の中では、理屈が合わないんです。
体内に何かしらの物質(薬剤等)を投与することなく
代替的手法を提示している場合、例えば、磁力や電気など。
がんの研究がこれだけ進む世に於いて
盲点的に見落とされていた等と考えるのは不自然です。

抗がん剤に換わる物質を投与して治療を行う場合も然りです。
副作用に関する多くの治験はどうなっているの?

私が思う事。
標準治療に至る迄の過程や実際にその標準治療を受けた方の人数。
その人数は圧倒的に多いのです。
分母が大人数の場合、その中から好ましくない作用を発症してしまう件数
自ずと高くなってしまいます。発生率ではありません。

病気を罹患した方の目に入る情報の多くは
好ましくない事態が発生した事実だけ。
私はそうでした。
発生率は眼中には入ってきません。

好ましくない事実に触れ
「やっぱりな」
で、終わってしまうんです。

上記のネット上などに広まった噂?に関する訂正記事も目にします。

  • WHO(世界保健機関)は抗がん剤治療を強く推奨している。
    (WHOの必須薬リストの中には、数十もの抗がん剤が入っている)
  • 抗がん剤は米国で使われています。
    (アメリカ国内の医薬品売上ランキングのTOP10の半数以上が抗がん剤である)

論拠までは辿っていませんが、この様な記載がなされています。

どちらの説を信用するのか・・・

情報が余りにも溢れすぎ、どの情報が自分にとって最適なのか
いわゆる、正しい情報リテラシーが個々に求められます

情報を自分の目的に適合するように使用できる能力です。

心にショックを受けた時などは
自分の思い込みや、身近な周囲の情報などにより
非合理的な判断をしてしまう心理が働くのは
仕方のない心理現象らしいんです。

確証バイアスといいます。

自分の信念や仮説を支持する証拠ばかりを優先して選び
一方で
仮説に反する情報は軽視し懐疑的になりやすいんです。

罹患された方の心理状態は恐らく複雑です。
失礼ながら、確証バイアスが強く働いてしまうかも知れません。

がん治療において罹患者に治療の選択の余地はあるのか


病気を患われた方のご家族、近親の皆様へ。

ご事情が許す限り治療方針を決める際には
主治医さんからの説明を一緒に受け、
積極的に関与なさってあげて下さい。
確証バイアスに惑わされない合理的判断をお気持ちにお留め置き下さい。

病気を患ったご本人さんとの意見の違いがみられる場合
気持ちの変化が感じられるまでは
ご家族様のお気持ちは一旦心にお留め置き下さい。

病気を患ったご本人さんへ。

『辛いのは病気を患った私なんだ。ほっといてくれ。』
確かにそうです。でも、一刻も早く
その心境から次のステップに歩みを進めて下さい。

ご家族さんも辛い思いをしている事に気付いて下さい。
あなたを慮って辛さを表に出すことができない事を知って下さい。

辛さの大小など比べる意味はありません。
わかるはずありません。みなさまがお辛いのです。
お互いが辛い思いをしている事を忘れないで下さい。
手を合わせて、協力してもらい、この辛い状況から脱する事に
一日も早く気持ちを切り替えて下さい。

私は抗がん剤治療に入るという時は
意識が不明で説明を受けることは出来ていません。
妻と実母が説明を受け、同意してくれています。

手元に残る説明同意文書から話を進めます。

病院で、薬物療法(抗がん剤・分子標的治療薬)を受けるには
説明同意文書への署名を求められるんです。

説明同意文書には

  • 治療の目的・必要性
  • 治療の方法(薬剤の種類・使用量・スケジュール)
  • 治療の有効性
  • 予想される副作用
  • 副作用に対する予防と対策
  • 治験・臨床研究等
  • その他の治療(代替可能な治療)

の各項について説明がなされています。

その他の治療(代替可能な治療)の欄には
以下の文言が記されています。

現在のがんの状態から、無治療で経過することでがんや悪性腫瘍が進行して体調が悪くなり、生命にかかわる可能性がありますので、化学療法をお勧めします。ご希望されない場合でも、代替可能な治療法があればお示しします。

他の医療機関の医師による意見を聞いていただくセカンドオピニオンを受診し、診断や治療選択の一助にしていただくことも可能です。

他の医療機関でのセカンドオピニオンを希望された場合でも、あなたの不利益になることはありません。

●●市立総合医療センターの説明同意文書より

つまり、どの治療を受けるかの選択は、罹患者さん本人が行えるようです。

これらの説明を受けた妻と実母。
記憶に残った強い言葉は

悪性リンパ腫は抗がん剤が良く効く病気なんです
でも、それも本人次第。
ここまで病状が悪化すると何とも言い難いですが、抗がん剤治療を行う意義は十分にあります。
後はご本人さんの適正と体力次第です」

危篤状態から脱しつつある状況でもあり
藁にも縋る思いだったと聞かされました。

抗がん剤は、毒薬・劇薬に指定されているそうです。
体への毒性や副作用を嫌い
抗がん剤治療拒まれる方は確かにいらっしゃるそうです。

まだ私がHCU(高度治療室)での治療中にです。
このような、心停止や急性腎不全などに一気に襲われ
最悪のコンディションであったであろう私です。

そんな私の個人的な結論です。

悪性リンパ腫(B細胞性非ホジキンリンパ腫)を罹患して

RーCHOP療法療法を8クール を受け
精巣にも病巣が集積し、右側の精巣の高位精巣摘除術を受け
悪性リンパ腫の確定診断に至った経緯があり
精巣原発の可能性が高く、中枢神経系への再発の懸念が高く
中枢神経系や脳への病巣の集積予防の目的で
HDーMTX療法を2度に渡り行った上での結論です。

寛解までたどり着けた今
いずれの抗がん剤治療に関しても
施していただけた事をありがたく、深く感謝しています。
抗がん剤治療を了承してくれた妻に深く感謝しています。

ただ、このことはお知り置き下さい。

抗がん剤治療といっても、用いる薬剤は多岐に渡ります。
同じ病名でも、使用する薬剤・薬量は人それぞれです。

又、抗がん剤治療が

  • よく効くがん
  • そこそこ効くがん
  • ほとんど効かないがん

がある事という事をどうぞお知り置き下さい。
ひとくくりに、抗がん剤治療と考えるのは適当ではないのかも知れません。

悪性リンパ腫は抗がん剤治療がよく効くがんとされています。

「よく効くがん」とは、抗がん剤治療によって治癒が期待できる“がん”のことで、急性骨髄性白血病や悪性リンパ腫、胚細胞がん、絨毛がん がこれに該当します。
これらには抗がん剤治療が効果的で、高い確率で治癒することが分かっています。

熊本大学医学部附属病院 がんセンター長 岩瀬弘敬 様 
「はじめに 抗がん剤とのつきあいかた」 より

同じ病名であっても、その症状や病状は、十人十色。

誰かがそうであったから、自分もそうだとも限りません。

この話が、確証性バイアスに依ること無く

ご自身で決断する、後悔の無い治療方法選択の判断

の一助になれればこの上の無い喜びです。

~ End ~

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